手縫いでレザークラフトを始める人の革選び

どの革を買っていいのか分からない!

種類が多すぎてどれを買っていいか分からない!

革の種類、多いですよね〜。
正直我々スタッフから見ても革の種類は多く感じます。

なめし方や、色、型、手触り、ツヤ、厚み、もううんざりするくらいの種類があって、何を基準に選んでいいのか分からないというお悩みは、初心者の方は特にお持ちではないかなと思います。

そこでこの特集記事では、これからレザークラフトを始める方や、始めたばかりでどの革を買おうか迷っている人に我々タンナーがオススメする革素材をズバリご紹介していきます!レザークラフト初心者で手縫いを考えている人は必見

まずは知っておきたい「なめし」のこと

動物の原皮をそのままほっておくと腐ってしまうので、それを腐らないように処理することを「なめし」と言います。

まずはこの「なめし」の種類について知っておく必要があります。 なめしの方法には大きく分けると2つあります。

・植物タンニンなめし
・クロムなめし

◆ 植物タンニンなめし

植物成分であるタンニンを使ってなめす方法を植物タンニンなめしと言い、この植物タンニンなめしで作られた革は一般的に”ヌメ革”という総称で呼ばれます。

植物タンニンなめしは硬くしっかりとした革が多く、財布、カードケース、スマホケースなど多くの作品に使われます。

当店の毎月の売上ランキング上位には常にこの”ヌメ革”系の素材がランクインしており、エイジングも大きな魅力の一つなので革の個性が好きな人ほどこちらのヌメ革系を選ばれる傾向があります。



植物のエキスを主成分にした「なめし剤」は様々あり(ミモサ・チェスナット・混合なめし剤・ケブラチョ・合成タンニン・タラetc)各タンナーさんのなめし方、レシピによって"ヌメ"の締まり方や柔らかさ、色味(白っぽい・少し赤味・少し黄み)が異なります。

協伸株式会社では最終的な仕上げでどのようにも振れるように、ヌメの中では中間寄りの柔らかさ、色味は少し白っぽい〜黄み寄りの仕上げになっています。ちなみにこの白っぽく仕上がるのは、コシのあるルイヴィトンのヌメの様なホワイトタンニングヌメをイメージしてなめしているからで、「協伸で買ったヌメ革タンロー色が白いなぁ」と思われた方、実はこういう理由があるんです。

↓当店の植物タンニンなめしの革で制作されたお客様の作品例

  • 植物タンニンなめしは色が変化するエイジングが魅力
  • 革が硬くしっかりとしていて手縫いに向いている
  • 当店売上ランキングでは常に上位に入る

◆ クロムなめし

化学薬品のクロムを使ってなめす方法を「クロムなめし」と言い、植物タンニンなめしに比べてなめす手間がかからずコストも抑えられるので大量生産することが可能で、キズや水への耐久性も高いため、一般的に小売店で販売されている財布、バッグ、靴、ジャケットなどのほとんどにこのクロムなめしの革が使われています。

タンニンを含んでいないためエイジングによる色の変化はありませんが、伸縮性も高く、シミや色落ちの心配を少なくなるというメリットがあります。

またクロムなめしの革はコバ磨きが出来ません(磨いても綺麗に整わない)。へり返しで縫製するか、コバ液を塗布して整える等の処理が必要になります。ですので、コバをピカピカに磨いて作品を仕上げるイメージをされている方は、このクロムなめし素材を選んではいけません。

※ちなみにコバ液は当店でも販売中↓

業務用コバ液SuperEdge30ml

業務用コバ液SuperEdge1,000ml

↓当店のクロムなめしの革で制作されたお客様の作品例

  • クロムなめし革はキズや水に対する耐久性に優れている
  • コバ磨きはできない。磨いても綺麗に整わない。
  • 経年変化はしない

レザークラフト定番革、ヌメ革タンローを推す理由

この植物タンニンなめしとクロムなめしの特徴を踏まえたうえで、私たちタンナーがレザークラフトを始める人へオススメする革素材は「ヌメ革タンロー」です。

もちろんそれにはいくつも理由があります。

◆ 一番売れているから

当店の毎月の売り上げランキング1位は、ほぼこのヌメ革タンローです。

この理由が一番説得力があるかもしれませんね。

もちろん初心者の人だけでなく、多くのリピーターの方からもご注文をいただくレザークラフトでは定番、王道の革素材、それがヌメ革タンローなんです。まずは定番品から入るのも悪くない選び方です。

◆ エイジングが楽しめる

ヌメ革タンローは時間とともに色が変化していく素材です。

革内部に含まれるタンニンという物質が紫外線(日光)を受けることで酸化し、革の色が白っぽい色から飴色に変化していきます。

この変化の仕方は人それぞれ異なり、例えばヌメ革タンローで作った財布一つにしても、使う人の手の脂手入れの仕方などで変化の仕方は違ってきます。またツヤの変化もありますので、自分だけの個性的な唯一無二のアイテムとして育てることができる革素材であるため、多くのレザークラフトファンの間で人気が高いのです。

もしあなたがヌメ革タンローを使って作品を制作したら、絶対に制作直後の写真を撮っておくことをオススメします。Before/Afterを眺めるのもまた面白いですよ!

↓エイジングがよく分かるお客様の作品例

◆ 好きな色に染色できる

ヌメ革タンローには色の仕上げが何も施されていませんので、自分の好きな色に染色することができるという点も大きな魅力です。

・この革のこの辺は濃く色を付けて…
・ここは薄めの色合いにして…
・色をぼかしてグラデーションを入れて…

など、好みの色にカスタマイズできてしまうところは他の染色系の革素材には無い大きなメリットと言えます。

革の染色もレザークラフトの醍醐味の一つですので、ぜひ染色にも挑戦してみてください。

↓染色して作られたお客様の作品例

※当店で取り扱っている革専用の染色剤アニリニンフィックスも販売中↓

◆ カービングができる

初心者の方でも「カービングに挑戦してみたい!」と思われる方は結構いるんじゃないでしょうか?

基本的にカービングはヌメ革タンロー一択です。

カービングは革の表面に専用のナイフや道具を使って凹凸を作り、模様や文字、イラストなどを施すレザークラフトの技法のひとつで、革を水に濡らして作業を行うため、一般的にはヌメ革タンローが素材として使われています。

↓カービングを施されたお客様の作品例

  • 当店で毎月一番売れているのはヌメ革タンロー
  • 飴色に変化してく様子を楽しめる
  • 自分の好きな色に染色することができる
  • カービングで好きな模様を革に描ける

はぎれ、カット革、半裁…どれがオススメ?

ヌメ革タンローと言っても、協伸レザーオンラインショップではハギレから半裁、AランクからCランクまで幅広い商品ラインナップがあります。

ここではそれぞれの商品がどういう作品に向いているのかをご紹介していきますので、ぜひ参考にしながらお買い物してもらえればと思います。

◆ はぎれパック

半裁から必要な革をカットした残りの革を集めたものがはぎれパック。

はぎれのサイズはAサイズの半分程度から手のひらサイズ程度のものが多く、厚みは1.2mm、1.5mm、2.0mmの3種類がバランスよく含まれていますので、実際に触ってみて革の厚みを体感してみてください。

じゃぁはぎれパックでどういう作品が作れるの?

基本的には小物系、カードケース、キーケース、コインケース、コースター、こういった比較的小さい作品であればハギレパックで十分にカバーできるでしょう。協伸レザーオンラインショップではヌメ革タンローのハギレパックを300gのお試しサイズから大満足の2kgパックの2種類をご用意しています。※いずれも大きさや厚みの配分は同じです。

まずはハギレパックで革のカットや手縫いに慣れてから、カット革や半裁などに挑戦、といった流れでご利用いただくのがお買い物の失敗を避けるという点では理想的かもしれません。ただ、ハギレパックには半裁の足や首の部位にように比較的シワやキズの多い部分が含まれますので「初心者だけどそういう革はイヤだ」という方はカット革をお選びください。

ヌメ革タンローはぎれパック300g

ヌメ革タンローはぎれパック2.0kg

↓ハギレパックで制作されたお客様の作品例

◆ カット革(切り売り)

600×300mmや300×300mmといった当店の規定サイズにカットした商品。

半裁から大きなキズを避けた部分だけをカットするため、単価はハギレや半裁よりも高く設定しています。
どうしてもシワやキズなどが少ないものが欲しい!
そんな人にオススメするのがこのカット革です。
一番小さなサイズで100×200mmからご注文いただけます。

またカット革の中には「ヌメ革タンロー」に加えてさらに柔らかい「ヌメ革タンローソフト」という通常のものよりもオイルを多く配合して柔らかく仕上げた素材もあります。

ヌメ革タンロー

ヌメ革タンローソフト

↓カット革で制作されたお客様の作品例

◆ 革素材セット

こちらはカット革の中でもBランク、Cランクの商品。
サイズは600×300mmや200×300mmなどカット革と同じ規定サイズの中から選べます。

ヌメ祭りセット

ランクが落ちる分、単価も低く設定されていますので、練習用加工用などある程度のキズやシワ、焼けなどがあっても問題ないよ!という場合はこちらを選んだほうが断然お得。学校の授業などで使用されたり医療関係のリハビリ目的などで使われることも多い人気のセット商品です。

↓ヌメ祭りセットで制作されたお客様の作品例

◆ 半裁ハーフ

半裁を頭側とお尻側に半分にカットしたものが半裁ハーフ。
ヌメ革タンロー半裁ハーフは下記の3つのランクに分かれています。

ヌメ革タンロー半裁ハーフ個性(小)

ヌメ革タンロー半裁ハーフ個性(中)

ヌメ革タンロー半裁ハーフ個性(大)

キズやシワ、血筋といった革本来の個性が少ない(キレイ)ものが個性(小)、そこから中、大と個性が多くなっていきます。半裁ハーフはトートバッグやショルダーバッグなど大きいバッグ系の作品に適したサイズで、またあえて個性(大)を選んで使用感・アンティーク感のある作品を制作したりといった使い方も面白いですよ。

↓半裁ハーフで制作されたお客様の作品例

◆ 半裁

ヌメ革タンロー半裁はAランクとBランクに分かれており、文字通り全体的にキズ等の少ないものがA、もう一方がBランクとなっています。

ヌメ革タンロー半裁

半裁ではトートバッグなどの大きな面積を必要とする作品はもちろん、例えば、トートバッグ、財布、カードケース、キーケースを同じ一枚の半裁から同系統の作品として作ることができます。

またショルダーバッグの手ヒモショルダー部分などは半裁のベンズ(背中あたりの部位)からカットしますので、ある程度の革の長さが必要な作品などには半裁が必要になってきます。

またカット革よりも半裁を買う方がコストパフォーマンス的にはずっとお得なので、長期的なビジョンで作品を作っていく計画をお持ちの人や、ある程度レザークラフトに慣れてきた時には半裁の購入も検討してみましょう。

※ちなみに、当店の毎月売り上げランキング第1位はこの「ヌメ革タンロー半裁」です。

↓ヌメ革タンロー半裁で制作されたお客様の作品例

まとめ

この記事では、まずは定番品を試して欲しいという思いから「ヌメ革タンロー」を特集して、レザークラフト初心者の人向けに紹介してきました。

最後のまとめでこう言ってしまうと元も子もなくなりますが「この革が良い!」「この色が欲しい!」そういった直感で選ばれてもきっといい作品ができると思います。革選びに正解なんてありませんし「ああ、違う革にしとけば良かった…」と後悔するお買い物があったとしても、レザークラフトのスキルが上がっていけば絶対にその革もうまく活用できるようになっていきます。

協伸レザーオンラインショップではお買い物への不安や疑問などをズバッと解決して楽しく利用してもらいたいと強く考えておりますので、革選びのご質問やご相談などどうぞお気軽にお声かけください